2011年4月24日

チーフシアトル - 大地の祈り


アースデーにふさわしい快晴の空に輝く太陽だったのか、それとも、このシアトルの大地に愛を残していった魂だったのか・・・私は呼ばれたかのようにダウンタウンへと急いだ。

ここ2~3日、チーフシアトルのことが頭から離れない。それとともに、彼の言葉が繰り返し繰り返し聞こえてくる。

The earth does not belong to man, man belongs to the earth (大地は人間が所有するものではない、人間は大地の一部なのだ)

チーフシアトルは、シアトルという町の名前の元にもなったインディアンの酋長。1855年、チーフシアトルはインディアンに所有地のほとんどを放棄させることになったポイントエリオット条約に署名したが、その結果に不満を持ったインディアンと白人との間の戦いでのさらなる流血を避けるため、アメリカ大統領の土地買い上げ要求に応じ、和平交渉に努めたと言われている。

「大地は人間が所有するものではない、人間は大地の一部なのだ」は、その時に行った有名な演説「チーフシアトルのスピーチ」での言葉である。

ダウンタウンのパイオニアスクエアにチーフシアトルの像があるということを、以前友達から聞いていたが、記憶の隅の隅にあってほとんど忘れていた。その記憶が昨日突然飛び出してきて、頭の中を覆ってしまった。

それは知らないものを見に行くというのではなく、何か懐かしいものに触れるため「会いに行く」という感覚だった。



この胸像を前になぜか涙が溢れ出る。そのときまで大地に連綿と受け継がれてきていた生き方が、今ではほとんど消えかけているその生き方が、今、さんさんと降り注ぐ太陽の光に、この空気の中に、力として蘇ってくるのを感じる。

チーフシアトルと部族の人々の想いと、私の魂の願いがここで出会う。

チーフシアトルの言葉はさらに続く。

「空を、あるいは大地のぬくもりを、どうして売ったり買ったりできるだろう。私には理解できない。風の匂いや水のきらめきを、あなた達はどうやって買おうというのだろう ―― 私達はこのことを知っている。大地は人間が所有するものではない、人間は大地の一部なのだ。あらゆるものは、一つの家族を結びつけている血と同じように、繋がり合っている ―― 私達人間は命という織物を自分で織ったわけではない。私達はそのなかで、ただ一本のより糸であるに過ぎないのだ」






ワシントン湖の湿地帯に行ってみたくなった。ここは公園になっており、水辺を散策することができる。公園の入口にはハイダ族の酋長が彫ったトーテムポールがあり、水に向かって立っている。一本のスギの木に、一族のストーリーが掘り込まれたトーテムポール。それからは力強さと優しさが感じられた。




いのち芽吹く春。空も水も美しく、青葉が萌える。



前方では鳥が小さな体を震わせ、あらん限りの声で歌っている。



なんて美しいのだろう。大地はなんて優しいのだろう、力強いのだろう。この二本の足で大地をしっかり踏みしめてみた。

文明と科学技術の発達は、本当に私たちを豊かにしたであろうか。豊かさとは、どこにあるのだろうか。便利さや快適さにあるのだろうか。人間中心で自然を征服することにより、本当の幸せを得られるのだろうか。

答えは明白である。

先祖の願いと祈りが風にそよいでいる。大地から鼓動のようにこだましている。湖面に映し出されている。それを今ここに受け取って、ここから新しい未来へと繋げていきたい。





「私達が子どもたちに伝えてきたように、あなた達の子どもたちにも伝えてほしい。大地は私達の母。大地に降りかかることは、すべてわたしたち大地の子らにも降りかかるのだと。大地を傷つければ、その創造主に対する侮辱を重ねることになる。あらゆるものが繋がっている。

私達はこのことを知っている。大地は人間が所有するものではない、人間は大地の一部なのだ。あらゆるものは、一つの家族を結びつけている血と同じように、繋がり合っている ―― 私達人間は命という織物を自分で織ったわけではない。私達はそのなかで、ただ一本のより糸であるに過ぎないのだ。

生まれたばかりの赤ん坊が母親の胸を慕うように、私達はこの大地を慕っている。もし私達がどうしてもここを立ち去らねばならないのだとしたら、私達が大切にしたようにこの土地を大切にしてほしい。

美しい大地の思い出を、受け取ったときのままの姿で心に刻み付けていてほしい。そしてあなた達の子供のそのまた子供たちのために、この大地を守り続け私達が愛したように愛してほしい。いつまでも」

(チーフシアトルの言葉より)



20114月22日、アースデーに捧げる>

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