2009年1月7日

黒糖の味


私は、サトウキビのジュースと、サトウキビのアイスキャンデーにアイスクリーム、そして黒糖が大好きである。

宮古島からフェリーで15分のところに伊良部(いらぶ)島という島があり、その島と川を隔てて下地島という島がある。その島の観光スポットのひとつ、「通り池」の入り口で、地元のおじさんが車で運んできたサトウキビをその場で搾ってジュースを売っている。冷やして固めたアイスキャンデーもある。その横のベンチには、黒糖も並べてある。

「この黒砂糖は混じりっけなしだからね~。空港で同じもの売ってるけど、ここより100円高いよ~、ここで買うのが一番安い!」

下地島は小さい島。そこで、観光客相手に稼げる場所は限られている。野良着の格好のままで客を呼び込もうと商売っ気を出しているおじちゃん、ちょっと可愛い。笑うと陽に焼けた顔が深いシワでくしゃくしゃになる。

私はこの土地の人たちの笑った顔がとても好きである。何という素朴な顔だろう。シワは生きてきた人生の深さを物語っている。やわらかい眼差しは、あまり人が擦れていないことを表わしている。こちらの心も和やかになり温かくなる。

黒糖のかけらを試食してみたら、これがまた素朴で格別な味がした。口の中で複雑な甘さがふわ~と広がって、細胞にスーっと吸収されていくようだ。全然しつこくなく、変な後味が残らない。

混じりっけなしの黒糖ってこういう味なのか。それだけで満たされる味、豊かな味。お饅頭を食べると次におせんべいが食べたくなり、その後、また甘いものが欲しくなるといった、両極端の永久ループに陥ることなく、小さなかけら1つで十分である。

サトウキビジュースもアイスキャンデーも、やさしい甘さがする。スーっと体の中に溶けていき、細胞が喜んでいる。自然の味ってこういう味なんだ。私が作っている畑の野菜もそうだが、素朴で豊かな味。他に何もいらない。

それが本物の味。

本物はすごいなあ。真正直でごまかしがない。飾らなくても色をつけなくても、そのままストレートに味わう人の心を動かす力を持っている。

黒糖を1つ、口に放り込んで思う。

私も、こんな素朴で豊かな味がする人生を送りたいなあ。

<写真:通り池>

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