2008年6月10日

エッセンスのパワー (2)

日本へ帰って3日後、私は彼女と向き合って座っていた。自然の成り行きでアメリカに渡ってシアトルに10年間住み、また自然の成り行きで横浜という全く新しい場所に拠点を置くことになった彼女。その彼女のいる空間は、不思議なエネルギーに包まれていた。床の間がある客間なのに、なぜか山小屋にいる雰囲気がする。部屋全体が荒削りの板張りだからだろうか。

3月30日、もうすぐ4月というのに、その日は真冬に逆戻りした日であった。彼女の家に着いてから雨が降り始め、ストーブを焚いていても寒い。ヒーリングに関することに触れるときには、必ずといってよいほど雨が降り寒くなる。彼女の周りにはネイティブアメリカンとアラスカのエネルギーが取り巻いており、日本にいながらここだけ異空間になっていた。

先回彼女に会ったのは昨年の11月。そのとき、シアトルの私の家で初めてエッセンスを調合してもらった。あのときも、このように向かい合って座った。あれから、エッセンスを通して私にも様々な気づきと出来事があった。

すべてのことに偶然はなく、完全なタイミングでやって来る。数ある中で、アラスカンエッセンスというひとつの手段に出会った。人生のこの時期に、それも、双子の魂とも言える彼女を通して。それは、どのような意味があるのか。きっと、いつかはっきりとわかる日が来るだろう。

人間は宇宙の一部であり、自然という大いなる力に包まれて生かされている。見える世界と見えない世界、その両方の世界をつなげて調和の中に生きることこそが、自然と共に生きる姿であり、太古の人達はそうやって生きてきた。残念なことに、この地球上から自然が急速に消えようとしている。その消えようとする自然と並行して、私たち人間も大きくバランスを失いかけている。

彼女によると、アラスカという所は、他の場所と比べて人口密度が極めて低いので、植物や環境が、人間のエネルギーに汚染されていない比較的純粋な姿のままで太古の昔から保たれているところが多く、白夜の夏や極寒の冬などのような激しい気候の変化の中で育つアラスカの植物は、素晴らしい「適応能力」を持っている。その適応能力を私たち人間の人生に取り入れることで、目まぐるしく変動する日々を心地よく生きることができるようにサポートすることが、エッセンスの役割なのだそうである。そう、常に変化する自然の中で生きる力とは、環境適応能力なのである。

「実際、アラスカの土地に住んで体感して、そのエネルギーと同調できるから、エッセンスそのもののパワーを素直に伝える媒体になれると思う」と彼女は言った。日本ではお金を払って何日間か講習を受けただけで資格がとれるそうであるが、確かにそれとは全く訳が違う。彼女は日の沈まない世界も氷に閉ざされる世界も知っている。その大地に立ち、自然を自分の肌で感じ、目で見、手で触れている。

彼女がセージの葉を焚いて、スマッジングをして部屋とペンデュラム(振り子)を浄化した後、私は目を閉じて深呼吸をした。次のサイクルの目標を明確にするときである。自分はどのようになりたいのか。肉体レベル、精神レベル、魂のレベル、それぞれに意識を向けていく。すると、心の中でイメージが浮かんでくる。それを読み取るように、彼女が手を差し出して私の手を取り、エッセンスのボトルの上でダウジングを始めた。

彼女は強調する、「自分はヒーラーではなく導き手であり、エッセンスを選ぶのはそれを取る本人のエネルギーである」と。「本来持っている自己治癒力を最大限に発揮できるようにサポートをしてくれるのがエッセンスであり、意識の奥底に閉じ込められている過去生や魂のレベルでの凝り固まったパターンをも表面化させて、ポジティブな方向へと転換する助けとなる。自己治癒の過程は、エッセンスと共にその浄化過程を乗り切ることである」と。

自然の生命の営みを観察するとわかるように、自然は絶え間ない変化の中で常にバランスを取ろうとしている。その柔軟さと力強さこそが自然治癒力であり、私たちひとりひとりの中にある大いなる力である。

彼女は、並んだボトルの上で左から順にぺンデュラムをかざしていくと、ぺンデュラムは特定のボトルの上で大きく動きを変えた。そして、4つのエッセンスが選ばれた。それは、2種類のフラワー(ブラダーワートとスターフラワー)と2種類の石(ファイヤーオパールとローズクォーツ)だった。このうちのブラダーワートとファイヤーオパールは、これまで毎回選ばれてきたエッセンスであった。黄色い花をつける食虫植物であるブラダーワートの特性は、「物事の本質を見抜き、その中核にある真実はシンプル」であることに気づかせる。そして、古代の火山の地層から採掘される石であるファイヤーオパールは、「女性性を象徴し、絶えることのない火山帯のエネルギー」を示し、“I have energy (エネルギーを持っている= 一時的で消耗される)”から“I am energy(自分がエネルギーそのものである=永続的)”に移行できるようサポートしてくれる。

彼女が持っているこのファイヤーオパールのエッセンスは、アラスカで受けたクラスで作ったものだそうで、世界にひとつのオリジナルということであった。そして、そのエッセンスには興味深いエピソードがあった。

このエッセンスをクラスの皆で一緒に作っているときに、大風が吹いてきて、その土地の先住民にとって世界創造の神であるワタリガラスとハクトウワシが同時に飛んできたそうだ。そのクラスの受講者の一人に、薬草に精通し、鍼師をしている先住民のお年寄りの方がいたが、その方は、これはすごいことだと、その場で踊りを捧げ始めたという。この話を聞いて私は、エッセンスという見えない世界の「仕組み」の一部に触れたようで、その神秘的でスケールの大きい世界がこの小さなボトルに入ること自体が、とても不思議に思えた。

さらに、この2つのエッセンスに加え、今回新しく選ばれたスターフラワーとローズクォーツもパワフルな特性を持っている。スターフラワーは天と地を結び、人ごみの中でも影響を受けずに自分自身でいられるように助けてくれ、常に自分の心と繋がってその心で話すことができる一方、他人の意見にも耳を傾けることができる能力を強化してくれる。ローズクォーツは心を開かせ穏やかにし、inner child(内なる子供)に繋がることができ、自分だけでなく他人とも密接でいられる手助けをしてくれる。

さて、エッセンスが選ばれると、次に1本のボトルにブランデーを少量混ぜた水(カビや腐敗を防ぐため)を入れ、エッセンスをスポイトに取って一滴ずつ入れていく作業がある。「入れる量はどうやってわかるの」と私が聞くと、「エッセンスが教えてくれるよ」と彼女は言った。

エッセンスが教えてくれる?

全くその通りであった。それもあっと驚くような形で教えてくれるのだ。

<つづく>

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