2007年10月30日

死んだことを知らない人々(2)

マコト君は突然現われた。寝ている私の服を触ったりしてゴソゴソしている人の気配に気づいた私の口からは(物理的な口を使わず、思うことで会話をする)、この質問が飛び出していた。
“Who are you? What’s your name?(あなたは誰ですか、名前は?)”

「ミ・タ・カ・マ・コ・ト」
白っぽいもやがかかった空間の中で、薄いカーテンを隔てた向こう側から聞こえてくるような抑揚のない単調な6つの音を拾い取って、これは日本人の名前だなと私は考えた。次の瞬間、若い男の子だとわかった。好奇心旺盛な十代後半といったところだろうか。顔は見えないが、白いシャツに黒っぽい皮のシャンパーを着ている。

「自分が死んだこと知ってる?」
例によって、私はいきなりまたこの質問をしていた。今度は日本語で・・・。

そう聞かれると、彼はびっくりして体をすくめて後ろへ飛びのいた。「死んだ」という言葉が明らかにショックだったようであわて始めたので、私は彼を安心させようと、こう言った。
「大丈夫、大丈夫、落ち着いて。周りを見てごらん。光が差しているところが見えるかな?そっちの方を見てみて。」
彼は、不安そうにおびえて周りを見ているようだ。
「君を迎えに来てくれている人がいるはずだから。必ず誰か迎えに来てくれているから。誰かいるか見える?よ~く見てみて」

すると、しばらくして彼が小さな声で言った。
「あっ見える、向こうに誰かいる・・・」
「じゃあ、その人をよく見てみて。何が見える?その人の方へ行けるかな?」
私にも、遠くに白いもやもやとした光が差しているのが見えた。
「・・・・う~ん・・・何か自転車に乗った人が見えてきた・・・・・あっ!友達!!!」
と叫ぶやいなや、彼は大喜びで一目散にその友達の所へ飛んで行ってしまった。「ありがとう」も言わずに。お礼も言わずに行ってしまうなんて、何とも若い人らしい。

彼はバイクか何かに乗っていたところ、交通事故に遭って即死したようである。特に即死した人は瞬間に魂が体から離れてしまうが、意識は体の中にあったときと同じなので、死んだということに気づかないことが多いという。その事故が起こったのは、まだ最近のことなのだろうか。彼には、先回出会った人のような暗さはなく、色々さまよって遊んでいたような感じが伝わってきた。

「People Who Don’t Know They Are Dead (死んだことを知らない人々)」という本によると、死んだとき、通常誰かが迎えに来るという。既に亡くなっている親や兄弟、親戚、友達、ガイドなど、特に自分と強い関係にあった魂が迎えに来るはずだという。また、見回しても何も見えないときは、既に亡くなっている人で自分が会いたいと思う人を心に描いて、その人を呼んでみるとよいともあった。今回実際にやってみたら、本当に本に書いてあった通りになったので、自分でもびっくりした。

そして、私は、彼が光の元へ行けたという嬉しさと暖かい気持ちですっきり目が覚め、この日は一日中気持ちがよかった。それにしても、友達を見たときの彼の嬉しそうな様子。死んだ人も生きている人も同じなんだなぁとしみじみ思った。

よかったね、マコト君!

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